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大阪高等裁判所 昭和40年(ネ)1110号 判決 1966年4月26日

被告、控訴人 大和銀行

理由

当裁判所は被控訴人の請求を正当と認めるものであつて、その理由は、左記に附加、訂正するほか、原判決理由記載と同一であるから、これを引用する。

(イ)  控訴人は、原審相被告浜野義一より控訴人に対する本件保険金請求権四〇〇万円の債権譲渡は形式的のもの(仮装)であつて、真実は浜野のための代理受領権の付与である旨抗弁し、成立に争のない乙第二号証の一(代金振込依頼書)によれば昭和三三年七月一二日付にて浜野が本件保険金四〇〇万円の弁済受領に関する一切の事項を控訴人に委任すると共に右保険金を控訴人佐野支店の支店長名義口座へ振込方依頼する旨の文書が作成せられ、右同日被控訴人が右申入を承諾した事実が認められるけれども、他面において、右乙第二号証の一及び成立に争のない乙第二号証の二と当審証人阪東隆雄の証言に徴すると、右代金振込依頼書と同一機会に本件保険金請求権を浜野より控訴人へ譲渡する旨の債権譲渡証書が作成され、右同日被控訴人は右債権譲渡を承諾していること、及び前記代金振込依頼書の文言中にも、「債権譲渡証書に基づき」請求並に弁済受領の権限を委任する旨が記載され、右の処理は控訴人の銀行事務を入念にするため右債権譲渡形式の文書と代理受領形式の文書を併用している取扱(厳密には両者は相矛盾する観念たることは明白である)に従つたものに過ぎないことが認められるから、この事実と成立に争のない甲第二号証の二の記載に徴するときは、本件の場合において右債権譲渡は形式的で仮装行為であり、代理受領権の付与が真実であるとは容易に認め難く、従つて、本件保険金の受領者は浜野であつて控訴人でないとの控訴人の主張は採用できない。

(ロ)  控訴人は、浜野が本件保険契約締結に際して、免責約款の存在を認識しなかつたこと、及び浜野から控訴人への債権譲渡を被控訴人が異議なく承諾したことにより免責の抗弁事由を対抗できないことを以て抗弁とするけれども、被控訴人の本訴請求は、本件保険金受領の際の特約を原因とするものであるから、右控訴人主張事実は右特約に基づく返還請求権の成立を阻止し得る事由に該当せず、右抗弁は主張自体理由がない。

そうすると被控訴人の請求を認容した原判決は正当で控訴は理由なく棄却

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